Water Library 025

・・水のほん“Water Library ”・・・

~・~・水にときめいて・~・~

 

日に日に日差しが春めいて寒さがやわらいできました。

立春から数えて15日目頃(2月19日、今年の場合は2月18日)は、二十四節気でいう雨水の日です。

雨水(うすい)は雪が雨に変わり、氷が水になって春に向かっていく節目とされて、啓蟄までの期間をいい、農作業の準備を始める目安となっています。

 

この雨水にお雛様を飾ると良縁に恵まれるという地方の言い伝えがあります。

雪解け水が川に流れ、草木も芽吹くこの時期、生命の源である水、母なる水、水の神さまが幸せをもたらしてくれる予感を感じます。

「春は名のみの~」の歌詞のように、早春は春一番が吹いたり三寒四温という気候不順な季節でもありますが、いとしい娘の健やかな成長、幸福な人生を願って、雨水の日に雛人形を飾るという古来からの人々の素朴な祈りや願いが、いまなお息づいているように思います。

 

さて、今年3月5日は次の二十四節気の啓蟄です。

あたたかくなり、土中で冬ごもりしていた虫たちがもぞもぞと穴からはい出てくる時期です。「啓」は、ひらく、「蟄」は、土にかくれて冬ごもりしている虫という意味です。

今回は、この土に焦点をあてた、『土の科学 いのちを育むパワーの秘密』という本をご紹介させていただきます。

 

 

著者の久馬一剛さんは、1931年生まれ。日本土壌協会理事、京都大学名誉教授などの要職を歴任され、水田土壌学、熱帯土壌学をご専門とされています。本書の裏表紙には次のように書かれています。

≪草木が生えている土を手のひらにとり、触ってみよう。軟らかい感触としっとり感。土は、その中に空気や水を含むから、生命を育む。土のパワーの秘密にさまざまな角度から迫り、世界のさまざまな土を紹介。(後略)≫

 

土のパワーとは? 

まずは、表紙を開いてみましょう。

最初に目に飛び込んでくるのは、口絵のカラーページです。

タンザニアでは妊婦が食べる「ペンパ」という土が市場で売られているそうで、珍しい土の写真が登場しています。

 

次は、世界中から集められた土の断面写真です。

白っぽいものや黒っぽいもの、黄色や赤、…土といえば茶色のイメージですが、さまざまな色合いや質感であふれています。きめの細かいものや粗いもの、水分を多く含むもの、一口に土と言っても、世界中の土はかなり違って見えます。

 

次のページは水田や棚田の写真です。これらは農作業がつくりあげた美しい造形です。しかし、反対に人間の家畜の過放牧によって砂漠化が進行しているという写真もあります。人間の営みにより影響を受けた土の写真が続きます。

土の中の生物の活動を紹介した写真もあります。いのちを育むパワーの秘密、土の神秘が解き明かされようとされています。

 

 

まえがきで久馬さんは、紀元前1世紀(前漢の終わり)の劉向(りゅうこう)という人が書いたもののなかで孔子の言葉が紹介されていることについて触れています。

この文章を要約すると、「土が植物を育て、それによって動物を養うだけでなく、生きものたちが死んで還りゆくところもまた土であること、さらに土を通った水が美味しい泉となることまでをいった上で、これほど多くの善きことをしながら、それを誇らない土のゆかしさまで言及している」ということだそうです。

ここで久馬さんは「土はいわない」ことについて、たしかに土は何も言わないのですと強調しています。

 

地球の陸地にどれほどの数の生物がいるだろうか。植物だけでなく、さらに土の中の微生物や生きものの個体数となると膨大な数、無限大になります。これらはすべて土によって養われて、土に支えられています。

 

そして、久馬さんはこのまえがきで「水の惑星」に対して「土の惑星」といってもよいのではなかろうかと提起し、本書を書く動機となったのは、土とその働きを正しく知ってもらいたいからと述べています。

 

「土というのはまことにダイナミックで、かつ、ヴァラエティに富んだ魅力的な自然の産物である。

土は、生産者、分解者として陸上で重要な働きをしているのだが、他方では地球上での水循環の経路となって、水質を決め、水体の生産力にも影響を及ぼしている。近頃は森と海(あるいは湖)とがつながっているという認識が広まってきているが、そのつながりが土を介してのものであることを知っておきたい。」(p14)

 

いのちの根源である土をいろいろな角度から見ると、足もとを確認するように大切なものが見えてきます。また、水とのつながりも見えてきます。

本書では以下のようなテーマを取り上げて構成されています。そのなかのキーワードを拾い上げてみたいと思います。

 

 

“第1章 土とつながるいのち”

・身土不二(しんどふじ)」…人間の体とその依って立つ土は一体である

・食の安全性、地産地消

・土壌が原因の風土病

 

“第2章 呼吸する土”

  • 土の中にすむミミズなどの生物や微生物がつくる団粒構造

 

“第3章 土はどうやってできたのだろう”

  ・ 岩石などの鉱物の化学的風化

  • 気候、生物、母材、地形、時間による土壌生成
  • 土壌の保水力
  • 土の中の生物の個体数(土1グラム中に1億の細菌とその他の菌類)

 

 “第4章 モンスーンアジアの水田とその土”

 

“第5章 日本の畑の土が水田を広めた?”

 

“第6章 いま土が危ない”

   ・砂漠化や灌漑農業と土壌の塩類化

   ・「エジプトはナイルの賜物」とヘロドトスは言った。しかし、アスワン・ハイダムの建設により、ナイルの氾濫でもたらされる土の若返りの効果、除塩効果が失われ、塩害問題が深刻化している

 

 “第7章 土の中の生きものたち”

 

“第8章 土を肥やす”

      ・肥料について

 

“第9章 土を生かす”

      ・農業における環境配慮、土なし栽培、植物工場、環境保全型農業、バイオテクノロジー

      ・人々の生活の中の土

      ・土を教育に生かす

 

“何千年もの間、人間が土のぬくもりに包まれ、土によって養われてきたことを思えば、土への回帰が心理的・生理的に人間を正常化する効果をもつとしても、決しておかしくはないという気がする。”

“子供たちを山へも連れて行きたい。大きな林の木の下からちょろちょろと流れ出す小さなせせらぎの水がどこから来たのかを考えさせよう。干天にも流れを絶やさない水は林の下の土が蓄えていたものである。日本の森林の下にある土が蓄えることができる水の総量は、全国にあるダムの総貯水量の2倍を超えることを知るならば、土が国土の環境を守る上で果たしている役割の大きさに気づくだろう。

 このように、子供たちに土がいのちと環境を育む大切な役割をもつことを知らしめることは、彼らの情操を培う上で大切であるだけでなく、将来にわたって自然といのちに対する畏敬の念を抱かせる上でも大きな意味をもつ。”

(p197~198)

 

以上が、本書の内容です。土のはかりしれないパワーには興味がありますが、考えてみれば、土は大地であり母なる地球そのものなのですね。本書の中の土という文字を、大地や地球に置き換えて読んでみても考えさせられると思いました。

 

乳幼児期に土に触れたり泥んこ遊びをしたりして、土壌菌を取り入れると免疫力があがるといわれます。LPSは、土の中にいる微生物の成分の1つで、もともとは人の体内に存在しませんが、LPSを積極的に摂取すると、粘膜を通じて免疫細胞を活発化させるので、風邪やインフルエンザの予防、花粉症の抑制、ガンになりにくい体になるそうです。(参考;世界一受けたい授業)

むかし飼っていた犬は犬小屋では寝ないで、穴を掘ってその中に寝ていました。具合が悪いときには、動物は穴で寝ると聞いたこともあります。大昔、人間も洞窟で暮らしていたといいます。

 

ところで、今度、福島の現状について漫才調で話してくれるおしどりマコ・ケンさんに直接お話を伺います。現在も毎日、汚染された水が地下や海に流れていっていますが、決定的な対処策ができずにいます。人間にはできることとできないことがあります。人間の勝手な都合で大地や海が汚される前にこの事業を止める方法はなかったのだろうかと今更ですが思います。せめて、もう二度と繰り返さないようにするべきではないかとも思います。土は何も言わないのです。

(2017/02/26)

 

【25冊目】Data

 土の科学

   いのちを育むパワーの秘密

   久馬 一剛(きゅうま かずたけ)著

 PHPサイエンス・ワールド新書

  2010年7月

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