Water Library 017

・・水のほん“Water Library ”・・・

~・~・水にときめいて・~・~

 

 

 11月というのに北海道では記録的な積雪になりました。雪の少なかった昨年と違い、今年の冬は寒くなるという予報です。温泉が恋しくなるシーズンですが、今回は温泉の裏方で活躍している「ろ過装置」や、プールや飲み水などの水をろ過する仕事をしている野原秀雄さんの書かれた『プールとお風呂で大活躍!循環水のプチ科学』という本を紹介いたします。

 

表紙をめくると、まず目に飛び込んでくるのは色鮮やかな江戸時代の浮世絵です。銭湯の女湯のなかが描かれていて、談笑したり、子どもを抱きかかえたり、裸のまま喧嘩をはじめた女性たちを振り向いて眺めている老女がいたりなど20人以上が場面に描かれています。銭湯の高い天井に女性たちの声が響き渡り、まるで湯気と共に桶や水の流れる音まで聞こえてくるような臨場感です。

次のページは対照的なドイツの現代の温泉プールの施設の写真です。これらの口絵を掲載した筆者の野原さんは、もともとご実家が銭湯を経営されていて、お父上様がおこした株式会社三協という会社で、水の管理「きれいな水」「衛生的な水」「快適な水」を追求し、安全で快適な水環境をつくり出すお仕事をされているそうです。

 

「美しい水」へのあくなき挑戦探究が本書にみてとれますが、まず第1章には「日本文化と生命の水」という見出しで、日本の神様イザナギ、イザナミの話で始まります。伊勢神宮に参詣するときに五十鈴川や二見ヶ浦でミソギをすることや、日本人の究極のリセット「水に流す」こと、日本人にとっての入浴やお風呂に関することが書かれています。

五右衛門風呂に入ったことがありますか。本書から、私は子どもの頃、親戚の家で五右衛門風呂に入ったことをなつかしく思い出しました。鉄釜でできた一人が入るのにやっとの狭い丸い浴槽に、底に敷いてあるスノコの板に足をのばして入るのですが、体が釜にふれるとやけどしそうな熱さです。おそるおそる湯につかるので、くつろぐ感じというより緊張してしまいましたが、それでもそこにじっとしていると、だんだんと気持ちよくなりました。

そんな日本人にとって身体をきれいに保つ習慣について、述べています。

 

第2章は、「むずかしくない「水の科学」」というタイトルです。人間の体は70%の水でできていること、これはみなさん、きっともうご存知ですよね。

 詳しく見ていくと、

  血液     83 %

  脳      75 %

  心臓や肺   80 %

  腎臓     83 %

  骨      22 %

だそうで、骨にも水分が含まれていたのですね。

 

「17 究極の水リサイクル都市、江戸」では、“江戸時代、外国人が道や川にし尿が捨てられていないのにびっくりしたのは、し尿は水田や畑の大事な肥料として有料でリサイクルされていたから”と書かれています。これを読んで、ヴィクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』やパトリック・ジュースキント『香水 ある人殺しの物語』を思い出しました。下水が整備される前のパリの街では、石畳の通りに上の窓から、排せつ物や汚物を投げ捨てていたので、たいへんな悪臭だったそうです。それで、ドレスの裾が汚れないように、踏まないようにと、かかとの高いハイヒールができたとか。

現代の日本では、下水処理場で「活性汚泥」というバクテリアを使って水を浄化して川に流していますが、増えたバクテリアを焼却し埋立処分して多くの電気や油を消費しているそうで、江戸時代のようなエコな暮らしに戻れないかと思います。もったいないという感覚が大事だと野原さんは訴えています。

「19 宇宙船に風呂はあるの?」「20 噴水、冷暖房、水族館、みんな循環水」「21 工場のクローズドシステムとは?」なども興味深い話題です。

日本ではトイレの水も飲めるほど、「中水道」の技術、循環システムが研究されていますが、なかなか普及は進んでいません。水資源は限りがありますから、リサイクルして有効にうまく水を利用できるとよいと、心から思います。

 

さて、小春日和のよいお天気だった日曜日に、西湘海岸を見学させていただく機会がありました。以前から西湘バイパスを通るとき、波が道路の下まで来ていることに気づいていましたが、実際の見学では小田原から大磯にかけての海岸線の浸食が想像以上でした。

50年前、子どものときに親しんだ海岸の面影がなく、15年くらい前と比べても、ずいぶん変わってしまって、遊べる海岸ではないように見えました。

2007年9月7日の台風9号により、二宮の袖ヶ浦海岸では一瞬にして砂浜が消失してしまいました。浜が消えたのは、波の緩衝材となっていた砂が減ってきたため被害が拡大したようです。そばの海水浴場もそれ以来海水浴ができなくなってしまいました。現在、養浜に酒匂川から砂を運び入れていますが、追いついていきません。(袖ヶ浦という地名は、ヤマトタケルが東征の際に嵐に遭い、妻のオトタチバナヒメが海神の怒りを鎮めるために海に身を投げて、つけていた櫛と衣の袖が岸に流れ着いたことが名前の由来です。)

飯泉の取水堰は、神奈川県民の20パーセントの水道、180万人分の水を供給していて、今日の水温は16度、濁度は1.5(年間の7~8割がこのくらいの濁度だそうです)、上流から18トン/秒流れてきて、下流に9トン/秒流していて、9トン/秒を取り入れているそうです。

川崎市が生田浄水場を閉鎖して、企業団の水を増量して購入していますので、この4月から取水を増量してますかと質問すると、取水量はとくに変化していないようです。(データをみていないので、よくわかりません)

砂浜に降りて説明をききました。西湘海岸(小田原市、二宮町、大磯町)の砂浜の回復保全に、平成26~43年にかけて整備事業を行い、全体事業費は約181億円かかるそうです。

国府津海岸で台風被害が出た護岸堤防のかさあげ工事は、1メートルの工事に70万から80万円かかり、たった1メートルでボーナスに換算するとかなりのお金がとぶということです。コンクリートの高い壁が続き、砂浜が見えなくなってしまいました。海岸に出るには、数ヵ所にある小さい出入り口を通りますが、もし津波がきたときに、その通路にたどりついて逃げ切れるかという心配もあり、また、道路に水がたまったら、排出する手段がないことも疑問視されました。

養浜には、しゅんせつした砂を移動させて運び入れていますが、1㎥に1万円かかり、年に10万㎥、10億円ずつを海に投げ捨てているそうです。ダンプのお金もかかりCO2排出環境公害も問題です。

 

養浜事業の費用がどこから出るかとききました。

県の費用に、国からの補助金もでているそうで、ダムは企業庁と県が半分ずつで、ストックヤードから海岸に運ぶのは県が負担。飯泉取水堰のしゅんせつは企業団、しゅんせつしたものをふるいわける作業は県。税金の使い道がほかにもあるのですがという声が聞こえてきそうです。

 

ダムなどは、その地域の農業で利用したり治水のために必要なことも理解できますが、遠いところの人口密集地に住む人の水道などの利水のために運ばれて、環境が悪化し生態系が壊れてしまっている状況は、まるで福島の原発の構造と同じだと連想してしまいました。

 

目先だけ見ていて将来の展望がみえない、もっと総合的に、関係者が集まって考える必要がある、価値観が多様化している現在での公共事業のもつ意味について言及し、あちらをたてれば、こちらがさがるというような図式にならないようにして、みんなにとっての公共事業の在り方をみなおしたいと言われた方もありました。

生態系への影響や海岸線の変化による住民への影響、漁業の被害などが指摘されていましたが、取水堰やダムの施設自体の問題点や水道との関連については触れられませんでした。

 

ダムや堰が原因で、自然が分断された事態になっていますが、もし、身内が企業団職員だったらと考えると、生活の糧がなくなってしまうとなると、不安かと思います。でも、だからといって、今こうしている間にも川の水が取水され、海岸が衰退しています…むずかしいですね。

話が離れてしまいましたが、本書を読んで循環水という視点から、普段使う水を少ない量で最大限に有効に水を使えるようになれば、自然への負荷も減ってよいのではと思いました。かつての海岸に回復させたい人々の希望がかなうとよいです。水に感謝です。

(2016/11/16)

 

 

PSHIZ08

【17冊目】Data

   プールとお風呂で大活躍!循環水のプチ科学

 著者 野原秀雄 & SANKYOシスターズ

 発行 戎光祥出版  2006年7月

 

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