Water Library 003

・・水のほん“Water Library ”・・・

~・~・水にときめいて・~・~

 

3冊目は、推理サスペンスです。

 

 物語は、嵐の晩に雑誌記者の高坂省吾が、自転車に乗った高校生の稲村慎司に出会うことから始まる。

自転車がパンクして帰れなくなった慎司を車に乗せて送ろうとすると、路上のマンホールの蓋が空いていて、大量の水が流れ込んでいた。そして7歳の子どもが飼い猫を捜すうちに、そのなかに落ちて行方不明になっていることを知る。慎司は、超常能力をもっていて、誰がマンホールの蓋を開けたか、張本人をさぐりだしてしまう。犯人である若者2人は、兄から借りたポルシェが台風の水につかり、エンジンが壊れてしまいそうになるのをおそれてマンホールの蓋をあけたのだが、悪意があってマンホールの蓋を開けたのではなかった。だが、結果的には一人の幼い子どもを死なせてしまった。追いつめられて若者の一人は罪の意識から自殺してしまう。

 一方、慎司のいとこの織田直哉も慎司と同じように超常能力をもち、直哉のほうがよりサイキック能力が高いが、高坂の前に現れて、慎司の言うことは全部トリックだと話す。さらに、高坂のもとへ差出人不明の手紙が相次いで届き、脅迫めいた電話もかかってきて、誰かの恨みをかったのかといぶかしむ同僚と、以前の婚約者小枝子や慎司や直哉を巻き込んで、誘拐事件へと発展していく。

 

慎司は、物に触れただけで、フロッピーから情報を読み出すように、記憶を読むことができる少年です。また、人が考えていることも読み取れてしまいます。慎司は、それをスキャンと呼び、場面などの映像となって見えたりわかってしまいます。だから、慎司は必要以上にさまざまな情報が入ってきて、非常に苦しいのだそうです。

慎司はマンホールの蓋を触って、2人の男が笑いながら蓋を動かしているのを見ます。その文のあとに宮部みゆきさんは、カッコ書きで次のように文章を添えています。

 

(ときどき人は致命的に無責任になる。悪意があってやったことならまだいいが)

 

この1文、なんか背筋がゾゾーッとしませんか?「善管注意義務違反」や、「無知の罪」という言葉がありますね。知らないではすまされないということが世の中にはあります。

 

最近、私は神奈川県の水がめである水源を訪ねる見学会に行きました。

県営の谷ケ原浄水場では、浄水方式の違いで、味がずいぶん違うことを体験しました。

浄水場では一般に急速ろ過方式で浄水処理をしますが、戦前は緩速ろ過が主流でした。微生物の力で水がきれいになり、雑菌もろ過できます。急速ろ過の水を飲んでみると苦味雑味がありましたが、緩速ろ過された水はまろやかでとてもすっきりした味わいで、同じ水が処理によって違った味になり、昔の人はこんなにいい水を飲んでいたのだと思いました。現在も緩速ろ過の浄水場で処理している自治体が各地にあります。

城山発電所では、地下230メートルまでエレベーターで降りて、揚水式発電の大きな発電機を見学しました。いまは2分くらいで降りますが、以前は5分近く地下までエレベーターでかかったそうで、そんな深い場所に大きな空間を作ったのも驚きでした。

津久井湖や城山ダムや沼本ダムを見学して、最後は相模湖に行きました。

 

ダムをつくるために、たくさんの村がダムの下に沈められたことは以前から聞いていましたが、今回案内していただいた場所は、湖畔にたつ碑、湖銘碑で、戦争中の神奈川の水道の歴史について教えていただきました。

碑の文章には、相模湖が我が国初めての多目的ダムによる人造湖で、昭和15年に起工され、戦後22年に完成したこと。このダム湖からはかりしれない恩恵―命の水と水力発電によるクリーンエネルギーを享受していること。さらに以下のことが書かれていました。

 

工事には、戦時下の労働力不足のもとで日本各地から集められた労働者、勤労学徒のみならず、捕虜としてつれてこられた中国人、当時植民地であった朝鮮半島から国の方策によってつれてこられた方々など、述べ三百数十万人が従事しました。

この歴史的事実の完成にあたっては、水没者や地元の方々の大きなご協力を工事にかかわられた方々のご苦労、殉職、病没等の尊い犠牲があったことを忘れることはできません。

私たちは世界の人々と共に生きる地域社会の創造を願い、ここにあらためて、礎石となられた地元をはじめ、関係者の方々に心から感謝するとともに、不幸にして亡くなられた日本各地の出身者、勤労動員の年少者、中国、韓国・朝鮮人の方々のお名前を記し、謹んで哀悼の意を表します。

                   平成五年十月 神奈川県知事 長洲一二

 

私たちが日頃何も考えずに使う神奈川の水道水には、こんな背景があったのです。

(2015/7/26)

 

【3冊目】Data

新潮文庫

龍 は 眠 る

宮部 みゆき  著

  平成7年2月  新潮社 発行

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