003.なきさわめのかみ

・水源に関わる神さま

   泣澤女神(なきさわめのかみ)   別名:哭沢女神、啼沢女神

 


 

 

  名義としては「泣くことが多い女」です。 意味としては2つあります。

1つめは 「なき」は泣く、「さわ」は悲しむ形容で愁傷そのものを意味します。

2つめは「泣沢」は元来、「鳴沢(なるさわ)」と同じく「水音を鳴り響かせている沢」の意味があります。

 

  古事記では火の神・火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)さまをお産みになられた時に陰部(ほと)を焼かれて、お亡くなりになった伊耶那美命(いざなみのみこと)さまの死を嘆き悲しむ伊耶那岐命(いざなぎみこと)さまの涙からお生まれになった神さまです。

 

1つめの意味からは「愛する人の死に際して、悲しみのあまり流す涙を象徴する女神さま」と考えられます。

古代の葬儀では、死者の遺体を一定期間安置する小屋(喪屋(もや))を建てます。

そこで近親者が食物を供え、あの世へ向かおうとする魂の再生復活を願ってさまざまな儀式を行う「殯(もがり)」を行いました。その昔、日本でも葬儀の時に泣く儀式があり、その役割を専門で行う女性を「泣(な)き女(め)」といいました。その役目は主に泣くことで死者の霊魂を慰撫(いぶ)して、無事にあの世へ送るというものでした。それは同時に招魂(しょうこん)(魂の呼び戻し=タマフリ)の呪術としての儀式をする巫女でもありました。このことから、魂を活性化させ寿命をつかさどる神さまとしての信仰があったと考えられます。

 

2つ目のそれは流れる涙は水から連想されたもので、沢は「多(さわ)」のことで水が多く流れ出ることを意味しており、それは泉や井戸など水の湧き出る場所を指します。このことから、井泉神として信仰されており、新しい生命力の源である水の霊として新生児を守護する神、生命長久の神ともされています。

 

  古事記には「香山(かぐやま)の畝尾(うねび)の木(こ)の本(もと)に坐す、名は泣沢女神」と記されています。奈良県橿原(かしはら)市木之本(このもと)町にある「啼沢女の杜(もり)」は万葉集に「泣沢の神社(もり)に神酒(みわ)すゑ 祈れどもわが大君は高日(たかひ)知らぬ」(「生命長久を願ってお神酒を捧げたのに、愛する人は死んでしまったでないか」と恨む心を表した歌)とある遺称地です。奈良県の大和(やまと)三山の1つ香具山の西麓の小高い所にあり、北方の低い所には上代の「埴安(はにやす)の池」の一部であったことが考えられることから、そこに流れ込む水音が鳴り響いていたことに基づく命名であることは明らかです。時が過ぎて都も奈良に移り、埴安の池も荒れて、さらに京都に都が移ってからは「泣沢」のいわれも忘れられました。そして「延喜式」神名帳には香具山の麓の畝尾に祀られている神、「畝尾都多本(うねびつたもと)神社」と地名で呼ばれるようになりました。現在の哭沢女神社がその跡で、境内にある「泣沢」と呼ばれる空井戸がご神体として祀られています。

 以上のことから、哭澤女神さまは「天香具山(あまのかぐやま)の麓にこんこんと湧き出る「生命の水」に宿る神霊」と言えましょう。

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 お祀りされている神社としては

   哭沢女神社(奈良県橿原市木之本 畝尾都多本神社跡)

   藤並神社(和歌山県有田郡吉備町)

   北桑名神社(三重県桑名市)

   轟神社(愛媛県今治市大三島町 大山祇神社 境外末社)

などがあります。

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